リークされたIPCC報告、世界食料システムの再評価を促す

2013年11月27日 アンナ・ラペ Rainforest Action Network, リンゼイ・アレン

念のために述べておくが、 気候変動が世界の食料システムに深刻な影響を及ぼすというのは今やコンセンサスとなっている。国連 気候変動に関する政府間パネル(IPCC) の最新報告書の草案がリークされたが、そこでは、今後数十年間に食料需要を満たすうえで気候変動が深刻な脅威になると強調されていた。その内容は決して目新しいものではないが、IPCC報告書は、世界食料システムについての徹底的な再評価を促すことになるだろう。

問題は、気候変動が私たちの食料に影響を及ぼすか否か、またそれは何時かではなく、むしろ農業と農業システムがどのような適応策を選択するかへと移行しつつある。

世界全体で温暖化が進むなか、猛烈な豪雨や干ばつの長期化が予想され、国連によると、それによって水不足の深刻化や栽培時期の変化が引き起こされる。このため、気候変動の最も深刻な影響が農業分野に表れると考えられ、国連の推計によると、トウモロコシ、小麦、米などの主食作物の生産量は、今世紀の終わりまで、10年ごとに2パーセントものペースで減少するおそれがある。

そうした状況が世界の飢餓問題にどのように影響するのか、またそれに対して私たちには何ができるのか、というまた別の問題も存在する。気候変動の影響に対する認識が高まるにつれて、いかに気候変動に強い社会を実現し世界の飢餓を解消するかについての議論が高まっている。

食品セクターに起因する排出は、主に工業的畜産ビジネス、肥料や農薬の使用、工業的農業による土壌からの炭素喪失に起因するが、最大の排出源となっているのは、一握りの農産物の事業的栽培を目的とした森林伐採である。

しかしそうした議論は、食料システムそのものが気象危機に及ぼす影響についての理解なしには行うことはできない。今日、近代的食料システムのほぼあらゆる側面で温室効果ガスが排出され、それは、世界全体で毎年排出される温室効果ガス全体の三分の一を占めている。食品セクターに起因する排出は、主に工業的畜産ビジネス、肥料や農薬の使用、工業的農業による土壌からの炭素喪失に起因するが、最大の排出源となっているのは、一握りの農産物の事業的栽培を目的とした森林伐採である。

インドネシアは今や、中国と米国に次いで世界第三位の温室効果ガス排出国である。それは一部には、(今やスーパーの棚に並ぶ包装食品の大半に成分として含まれる)工業用パームオイルを得るためのプランテーション開発を目的とした、熱帯雨林や泥炭地の破壊に起因している。

農産物と農薬の巨大企業であるカーギル、ウィルマー、モンサントといったアグリビジネス企業が唱える気候ソリューションは、これら企業が世界の気候に及ぼしている影響を踏まえたうえで疑問を呈すべきものである。これら企業のPR資料では、私たちが、農薬、遺伝子組換え種子や合成肥料また森林伐採による農地拡大を受け入れるか、あるいは 飢餓の深刻化に直面するかの選択を、迫られているかのように述べている。2008年に同じような論旨を展開していた農薬大手シンジェンタの取締役会長は、次のように述べた。「世界は、テクノロジーか、森林伐採か、飢餓かという選択を迫られています。他に解決方法はありません」

しかしそういった選択はまやかしである。工業的農業から利益を得ている企業の経営陣には、現在のやり方を変える理由がないのだろう。しかし、世界の資源の枯渇が進み、気候が不安定化するなかで、生態系に悪影響を及ぼし零細農家を追い詰め、それでもなお飢餓を克服できないという農薬や肥料に頼った農業から転換を図らなければ、私たちの生活を維持することはできない。

それでは私たちはどうすればいいのか。私たちは今すぐにでも気候に優しい農業へと確かな転換を図るべきである。森林を保護し、小規模自作農家を支援し、気候変動対応型農業(climate-smart agriculture)を推進することで、飢餓や気候危機の根本原因に対処することができる。

食料への権利に関する国連特別報告官による包括的評価は、「……農業生態学(agroecology)が十分に浸透すれば、10年以内にすべての地域で食料生産が倍増し、同時に気候変動が緩和され、農村の貧困を撲滅することができる」としている。

調査によると、有機肥料や輪作また被覆作物や生態的害虫管理(ecological pest management)を導入するとともに、すでに世界の食料の三分の一を供給している小規模自作農コミュニティの生産性向上を支援することで、農地の健全性を維持することが可能であるという。また、気候変動の影響に対するレジリエンス強化を促し、食料ニーズを満たすことも可能になる。食料への権利に関する国連特別報告官による包括的評価は、次のように結論づけている。「……農業生態学(agroecology)が十分に浸透すれば、10年以内にすべての地域で食料生産が倍増し、同時に気候変動が緩和され、農村の貧困を撲滅することができる」

企業協定、消費者需要、また政策を通じて、気候変動に対応可能であるとともに農家に寄り添い、それと同時に可能な限り早急に工業食品セクターの排出削減につながる農業システムの浸透を、働きかける必要がある。

それはすなわち、自然のままの森林を大豆やパーム油のプランテーションから守り、合成肥料や石油ベースの農薬への依存を減らし、小規模自作農を支援し伝統的な農業システムの生産性を向上するとともに、食物連鎖において蔓延する食物廃棄をなくすことを意味している。

今日、食用に適した食物全体の三分の一が廃棄されていると推定される。米国などの一部の国では、廃棄される食物は全体の二分の一にまで達している。食品廃棄の専門家であるトリストラム・スチュアート氏によると、インセンティブを設定して食品廃棄削減の取り組みを強化するだけで、30億人分の食料が確保でき、さらに国民全体の栄養所要量の130パーセントをまかなう食料が得られるという。

温暖化による世界中の農家への影響が深刻化する一方で、アグリビジネスは、従来の方法を続けたいがために、これからも「十分な食料がない」という恐怖心にもつけ込もうとするだろう。今こそ異なる道を選択すべきときである。

 

翻訳:日本コンベンションサービス

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