食料が商材ではなく共有財産であるべき理由

食料は、今日の産業的食料システムでは私有財として扱われている。しかし、生産者と消費者にとってより公正で持続可能な食料システムへの転換期において、食料は共有財産として扱われなければならない。私たちが食料を共有財産として扱った場合、市場規則と公的規制と集合的行動が組み合わさった混成型の三元的ガバナンス体制が地域レベルで行われ、食料の生産と配分は改善されるだろう。こうした変化は世界の食料システムに対して、甚大な倫理的、法的、経済的、栄養学的影響を及ぼすだろう。

共有資源か商材か

食料は、自然環境と耕作の両方から得られる、有限ではあるが再生可能な資源であり、人間の生存に不可欠である。時代と共に、地域的資源として共有されていた食料は、国を超えた私有商材に進化を遂げた。食料の商材化というこのプロセスは、機械化された工程と産業的食料システムが実践する規制に合わせて、食料に内在する特性を開発することに従事してきた。また、そうしたプロセスは食料を物として見る傾向の最終段階でもある。この傾向は、経済とは無関係の特質すべてを食料から切り離して考える社会的現象だ。その結果、食料の価値はもはや、私たちに安心と健康を与えてくれる多くの側面に基づくものではなくなった。そうした側面には、次のような事実が含まれている。

食料を多面的に捉えるこうした視点は、食料を一面的な商材として見る主流の産業的食料システムのアプローチとは異なる。とはいえ、産業的食料システムは今のところ、共有財産としての食料のすべての側面を包括しているわけでも、私有財産に変換しているわけでもない。共有財産としての食料の側面には次のようなものが含まれる。

 

最も基本的な人間的欲求が私有化されている

種子と土地の私有化、法規制、過剰な価格、特許という方法を通じて、産業的食料システムが食料の囲い込みを行ったことは、公的財産としての食料を入手しにくい状況を生む上で大きな役割を演じた。現在、このシステムは地球に暮らす過半数の人々に食料を供給し、食べる人はただの消費者であるという大量消費の市場を生んだ。そのため、産業的食料システムの目標は、食料関連企業の利益を最大限にしながら、不当に安い食料資源を蓄積することであり、経済では測れない食料の最も重要な特性、例えば栄養という点は無視される。これこそが世界の食料システムの機能不全を引き起こした原因だと多くの人々は考えている。

市場は頼りにならない

「お金がなければ食料もない」という世界観が主流である現在、食料にあふれた世界でいまだに飢餓がまん延している。地球規模で見れば、持続可能な方法で食料を生産し、人々に十分な食料を供給し、飢餓を防ぐという基本的目標を、産業的食料システムはますます達成できなくなっている。皮肉なことに、世界の食料の70パーセントを生産する人々の半数が飢餓に直面しているのだ。多くの人々は、市場優先型の食料システムは最終的に世界の人々をより健康にしてくれると信じていた。しかし世界の食料システムと飢餓の関連についての最近の分析はいずれも、食料の私有化を疑問視していない。結果として、多くの人々は、食料の入手可能性が世界の飢餓の主要課題だと考えている。

ところが現実はその逆を証明している。すべての人に必要な量の食料を、無規制の市場が提供することが単純に不可能なのだ。たとえ低所得層に食料を入手する手段を与えたとしても、食料そのものを提供できないのだ。食料を市場ルールに従って配分すべき商材とみなす産業的食料システムが、すべての人にとっての食料安全保障を達成することは決してないだろう。現在の持続不可能で不公平な食料システムに対する市場優先型の特効薬はない。むしろ、解決するためには、あらゆるレベル、すなわち個人、地域、国内外レベルで実験を行わなくてはならない。また、市場、国、集合的行動が主導するガバナンスへの多様なアプローチも必要である。食料システムのために異なる叙述を作り上げるには、従来とは違った画期的な視点を食料の転換に関する議論に取り入れる必要がある。

共有食料システムの実際的な影響

現在の壊れた世界食料システムを踏まえれば、食料の「再共有化」、すなわち食料を共有財産として見る方向への転換は、不可欠なパラダイムシフトだ。しかし、当然ながら、このパラダイムシフトは実際的な影響をもたらす。食料を純然たる私有財とする前提で交わされた貿易協定から離れて、私たちは食料を扱わなくてはならなくなる。その結果、世界レベルでの食料の生産、流通、アクセスのための特定のガバナンス体制を確立しなければならない。そのような体制には、飢餓との闘いとすべての人のための食料への権利の保障のための拘束力を持つ法的枠組み全世界的な国際政策倫理および法的枠組み世界的な食料への基本的権利国によって保障された食料安全保障に関する議論の場、食料価格に見合った最低賃金、食料への金融投機の禁止あるいはバイオ燃料のような別の食料利用への規制などが含まれる。

世界の食料システムの持続可能性や公正性を高めるために、クラウドソーシングとクリエイティブ・コモンズのライセンス・システムは、農業研究と、地域に適合し根拠に基づく技術にとって非常に有益だろう。適応可能で適切な解決策を見いだすために、数千人の科学者たちがそれぞれの研究室の中で革新的活動を起こすよりも、数百万人が革新を取り入れる方がずっと有効である。著作権を有する農業部門は実際に食料安全保障上の革新が拡大することを妨げていること、またオープンソース・ソフトウェアのように、複製する自由は実際に創造性と革新を促進することは、今日ますます多くの証拠によって証明されている。

食料システムの「再共有化」には何が必要か

集合的な市民行動、あるいは新しい形の食料ネットワークは、より持続可能で公正な食料システムへの転換において鍵となる。それらは、市民参加、コミュニティ、地産食料の賛美といった社会生態学的な実践に基づいているからだ。エリノア・オストロム氏の多中心的ガバナンスに基づけば、三元的ガバナンス体制によって食料の生産と消費と配分が可能になる。三元的ガバナンス体制を構成するものとは、第一に、もともと地域レベルで生まれる集合的行動である。第二に、市民の幸福の最大化や、市民が食料への権利を享受することを可能にするフレームワークの供給を主要目標に掲げる政府である。第三に、国の規制やインセンティブの下で繁栄できる民間部門だ。

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翻訳:髙﨑文子

Creative Commons License
Why Food Should be a Commons Not a Commodity by Jose Luis Vivero Pol is licensed under a Creative Commons Attribution 3.0 Unported License.
Based on a work at http://www.shareable.net/blog/why-food-should-be-a-commons-not-a-commodity.

著者

ホセ・ルイス・ヴィヴェロ・ポル氏は、飢餓問題と社会権の活動家であり、ラテンアメリカ、アフリカ、コーカサス地方で、食料安全保障政策やプログラム、食料への権利推進、栄養支援、食料主権に関連する14年の経験を持つ。さらに、生物多様性保護と植物の遺伝子資源に関する経験もある。農業エンジニアであるポル氏は、ルーヴェン・カトリック大学の博士課程研究フェローであり、より公正で持続可能な食料システム、グローバル・コモンズのガバナンス、生物多様性保護と飢餓問題の解決行動を促す動機付けの倫理、法律、政治などに関心がある。

ホセ=ルイス・ヴィヴェロ・ポル氏は、飢餓撲滅と社会敵権利をうたう活動家で、14年にわたり、食料安全保障の政策やプログラム、食料に関する権利の支援活動、栄養介入、ラテンアメリカ、アフリカ、コーカサス地方における食料主権に関する活動経歴を持つ。さらに、生物多様性の