飯田哲也氏に聞く、日本のエネルギーの未来

2011年05月17日 ブレンダン・バレット ロイヤルメルボルン工科大学

飯田哲也氏のアイデアは、急進的だが明快だ。日本は100%再生可能エネルギーに移行できる、というのである。飯田氏は数十年にわたって原子力に反対し、再生可能エネルギーを支持し続けている。このアイデアを前進させるために、飯田氏は2000年、自らが旗振り役となって 環境エネルギー研究所 (ISEP)の設立を果たした。同研究所は、地域や国、国際レベルで住民参加型のエネルギー政策を推進する独立系シンクタンクである。

興味深いことに飯田氏はもともと、原子力産業で研究開発に従事していた。だがその後、日本の原子力産業、そしてエネルギーセクター全体のあり方を最も厳しく批判する1人となる。時には官僚や経済界のリーダーたちに煙たがられるほどである。

しかし、福島県の原発事故以来、飯田氏は、現在の状況、そして日本がエネルギー危機を解決するために取るべき次のステップについて貴重な提案ができる人物として、急速にメディアの注目を集めている。

Our World 2.0ではこれまでにも、日本のエネルギー政策における官僚や政治家の行動や 、より最近では、日本は2050年までに100%再生可能エネルギーに転換できるかといったトピックにおいて飯田氏の意見を取り上げている。そして私たちは幸運にも先月、東京にあるISEPのオフィスで、多忙を極める飯田氏にインタビューを行うことができた。

この記事に掲載しているビデオインタビューで、どのようにすれば日本が今後、再生可能エネルギーに移行できるかを飯田氏は詳細に語っている。また、克服すべき課題についても概要を述べている。

もちろん、単に風力タービンやソーラーパネルの数を増やしたからといって、再生可能エネルギーに移行できるわけではない。必要なのは、大規模なシステムの見直しだ。たとえば、1つの重要な方策は、主要電力会社10社から独立した送電網を全国で構築することである。そうすれば、誰でも電力会社を設立できるようになり、現在の独占体制は、より多様なシステムに取って代わられるだろう。

再生可能エネルギーを支持する声は高まっている

長い間、飯田氏の研究所および自然エネルギー政策プラットフォーム (風力、太陽光、バイオマス、地熱、小水力などの再生可能エネルギーに関わる団体連合)の参加団体は、日本のエネルギー政策の転換を求めて働きかけを行ってきた。

地方自治体レベルでは、彼らの活動はおおいに勢いづいている。実際、東京都はプラットフォームのオブザーバーになっている。また、自治体グリーン政策の窓(自然エネルギーと気候変動に関する政策を推進する自治体連合)とも緊密に連携している。

たとえば、東京都は再生可能エネルギー戦略を採択し、2020年までに再生可能エネルギーの割合を20%に伸ばす目標を掲げている。また、横浜市は再生可能エネルギーの利用を10倍に増やすことを目指している。

一方、国からの支援は太陽光のみにとどまっていた。だが、この状況も変わるかもしれない。最近、環境省は再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査の結果を発表した( 報告書の要約をご覧ください)。

この調査は、複数のコンサルティング会社が共同で実施したもので、同時にさまざまな機関の専門家を外部アドバイザーに迎えている。その結果は、風力発電については原発40基分の発電量が見込めることが明らかになった、というものだった。

これは、2050年までに既存の52基の原子力発電施設を段階的に廃止しても、再生可能エネルギーで置き換えられるという飯田氏の主張を裏付けるものだ。環境省の報告書はまた、今回の地震と津波で最も甚大な被害を受けた東北地方では、風力発電で原発4~11基分の発電ができると論じている。

だが、太陽光、地熱、小水力、バイオマスといった,その他の再生可能エネルギーについては、飯田氏と環境省の意見は大きく食い違う。飯田氏はそれらも最大限、開発を進めるべきだと考えているが,環境省はそれらのエネルギーによって見込める発電量は小さすぎると懸念している。

第1ラウンドは再生可能エネルギー推進派の勝利

福島における原発事故後のエネルギー論争は始まったばかりだが、第1ラウンドは明らかに飯田氏をはじめとする再生可能エネルギー推進論者が勝利を収めた。しかし、当然のことながら反撃が予想される。まず、原発事故後、一部では「今は将来のエネルギーについて語るべき時ではない」という反応があった。原子力推進派は「原発事故の収束まで9ヶ月間ほど待てば、その頃には放射能レベルに関する国民の関心も薄れているだろう」という手を使いそうだ。そうなると、論争はどちらかといえば「客観的な」やり方で始まることもありうる。

今後も、原子力を利用すべき理由が片っ端から挙げられるだろう。その中には次のようなものがある。

このような理屈は、かつては説得力があったのかもしれないが、原発事故が起こった今となってはとても通らない。それでも、何度も同じことを聞いていると、人々はまた信じ始めるかもしれない。

だが今こそ、飯田氏のようなイノベーターの主張に従って、大胆な見直しをすべき時だ。その意味で、4月20日、ソフトバンクの孫正義社長が行った発表は新風を吹き込むものだった。孫氏は10億円の個人資産を投じて、太陽光、風力、地熱といったエネルギーの 早期導入を日本政府に提言する財団を設立すると公言したのである。

おそらく、彼に賛同して後に続く人たちが現れ、再生可能エネルギー推進論者がエネルギー論争の第2ラウンド以降も勝利を収め、日本が再生可能エネルギーへの道を歩むのを後押しすることだろう。

翻訳:ユニカルインターナショナル

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著者

ブレンダン・バレット

ロイヤルメルボルン工科大学

ブレンダン・バレットは、東京にある国連大学サステイナビリティ高等研究所の客員研究員であり、ロイヤルメルボルン工科大学 (RMIT) の特別研究員である。民間部門、大学・研究機関、国際機関での職歴がある。ウェブと情報テクノロジーを駆使し、環境と人間安全保障の問題に関する情報伝達や講義、また研究をおこなっている。RMITに加わる前は、国連機関である国連環境計画と国連大学で、約20年にわたり勤務した。